花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く

 「そんなに慌てなくてもいいのに。ちょっと待ってね、服着るから」


 もぞもぞと布団、制服が擦れる音がする。どうやら彼女は本当に服を着ていなかったようだ。それまで服を纏っていない彼女と話しをしていたのかと考えると、また顔が紅く火を噴きそうになる。


 「今日も来てくれたんだ?」

 「うん。ちょっと気になって」


 特に話すことはないけれど、彼女がここにいるって知りながら放っておくことはできなかった。一生懸命話題を探すけれど、盛り上がりそうなものは見当たらない。


 「…………」


 案の定、沈黙に支配される。


 「葵くん、」


 最初に沈黙を破ったのは西さんのほうだった。


 「ユリって、元気にしてる?」


 その視線は俺から外れて、グラウンドに向いている。テニス部の人たちが懸命にラケットを振って白い球を追いかけているのは、俺たちにとって少し眩しすぎた。


 「元気にしてるよ。西さんが教室に来なくなって寂しそうにしてる」

 「ダウト」


 抑揚のない声に、言葉を遮られる。

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