花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
表情筋ひとつ動かさずに彼は言った。うん、そんなことだろうと思ってたけどさ。
「まあさすがに不味いと思ってるから、半分は終わらせるつもりだけどな。先生に楽させてやりたいじゃん?」
「物は言いようだな」
先生が本当に俺たちがやった夏休みの宿題を全て確認しているかはわからないけれど、真面目な先生は全てに目を通してコメントを入れてくれる。
「あ、」
「なに? どしたん?」
「……あ、いや、なんでもない」
ふと思った。
俺、夏休みの宿題やらなくてよかったじゃん。
8割ほど済んでしまった課題は、お披露目を迎えることなくその生涯を閉じてしまうのか。
ちょっとだけ、かわいそうだと思ってしまった。
「そういや葵さ、」
ふと栗ちゃんが真面目な顔でそういうもんだから、俺の転校の話をどこかで聞いたのかと思って心臓が跳ね上がってしまった。
「なに、」
「西とは仲直りしたんか? 仲直りっつーか、よくわかんねーけど」
ケンカしたわけじゃないしなぁ、と彼がつぶやく。
なんだそんなこと。いや、栗ちゃんに心配かけておいてひとつも連絡しなかった俺が確実に悪いんだけど。栗ちゃんに助言をもらっておいて、あまりに礼儀というものがなってないな、俺。
「あー、その節はどうもありがとうございました。上手くいきました」
「おぉそうか良かった。崇めてくれたまえ」
「ありがとうございます栗ちゃん様」
あきらかにホッとしたような表情を見せられたら、こっちまで嬉しくなってしまう。
西さんと連絡先を交換したはいいけれど、肝心のメッセージはまだひとつもやりとりできていない。なんていうか、いつでも好きな時に連絡できるって考えるとそれだけで満足してしまう。
「末永く爆発しろ」