花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
今年は珍しく、登校日に授業がある。
国語、数学、英語。
受験においてかなりのウェイトを占める主要教科3銃士。国語、数学ともに最初の数分で先生が夏休みにあったことなどの雑談をしたけれど、イマイチ盛り上がるものでもなかった。
先生が持っていた紙の束にみんなの気が集中してしまったからだ。
「なぁ葵、あれってヤバいやつだよな」
「たぶんな。栗ちゃんみたいな人間をあぶりだそうとしてるんだと思う」
「しゃーねー。大人しく炙られっか……」
いやに男前だ。諦めるのではなく、自ら炙りだされてやるよというこの意気。
さすがバスケ部の兄貴栗原。
「えー、みなさんに素敵なサプライズを用意してきました」
不思議なことに、国語の先生も数学の先生も全く同じ言葉を吐いたのだ。示し合わせていたかのように。
そういや、あの先生たち職員室で隣の席同士だったな。
楽しそうな顔をして小テストの作戦を立てていたところを想像すると、若干腹が立った。
「では、はじめ!」
計2回の小テストを受けたわけだけれど、まぁ俺はできた。
補習の内容がかなり出題されていて、恐らく補習を真面目に受けていた人たちは楽勝だっただろう。
「へっ、見事に炙り出されてやったぜ……」
えっへんと威張っている栗ちゃんと、他何名か。主に日焼けした人たちはテスト終わりにやばいやばいと口々に叫んでいたけれど、反省はしていないようだった。
「よしっ、次の英語は休憩するわ」
「またテストだったらどうすんだよ」
「隣のクラスの奴に訊いたら、英語はテストなかったってよ」
ほう、それはいいことを聞いた。
スマホのメッセージアプリを見せられ、栗ちゃんが『英語は大丈夫』の文字を指でなぞる。
「藤岡先生はあんま小テスト好きじゃないからな。その代わり中間期末のウェイト100%だけど」
「あの先生、赤点取らないように超簡単問題忍ばせておいてくれるからやさしーよな」
「いつまでもそれに頼ってんじゃねーよ」