花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
「でもね、私が死ぬと葵くんが悲しんで学校を壊してしまうかもしれないので絶対に死ねないんですって言ったら鍵渡してもらえたんだ」
なんていうおねだりの仕方だ。
斬新すぎて言葉も出ない。
「よくそれで許してもらえたね……」
「間違ってないと思うよ?」
こっちにおいでよ、と西さんに手招きされる。
1歩、2歩と彼女に向けて歩みを進め、屋上のど真ん中にたどり着いた。
彼女の横に立つと、風が吹くたびに濃い花の香りが舞う。
「誰かひとりが私を何よりも望んでくれてるなら、それで十分死ねない理由になると思わない?」
「何よりも望んでるって……」
「あれ、違った?」
「違わないけどさ……」
恥ずかしいったらありゃしない。
俺は今まで彼女にそんなこと一言もいった覚えはないし、言えと命じられても恥ずかしさで少しためらってしまうだろう。
でも、間違ってはいない。
「まぁでも確かに西さんがいなくなったら、学校くらい壊すかも」
「それだけは止めないといけないでしょ。みんなのために」
せっかくの年季の入った校舎が台無しになっちゃう、と彼女は軽く笑った。つられるように俺もふっと笑みをもらす。
「俺、今日で最後なんだ、この学校に来るの」
「……栗原くんには言ったの?」
「まだ」
「そう」
今日の放課後言うつもりなんだ、と言うと彼女は眉を下げた。
「葵くん、怒った栗原くんに殴られないようにね」
「西さんの中で栗ちゃんはどれだけ凶暴なやつになってんの」
「それくらいしかねないでしょ。栗原くん、葵くんのこと本当に大好きだったみたいだし」
私が妬いちゃうくらいね、と。