花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
「葵くんと話してる栗原くん、すごく自然な笑顔だった。後輩と話してるときみたいなお兄さん面もしてないし、先輩と話してるときみたいなちょっと媚びたような態度もなかった。他の友だちと話してるときみたいな顔色をうかがうようなこともあまりしてなかった。葵くんが、栗原くんが栗原くんでいられた唯一の居場所だったかもね」
これまでの栗ちゃんを思い出す。
1年で知り合って、今までずっと仲良くしてくれた。俺がどれだけ酷いことを言ってしまっても、いつも笑って流してくれた。逆に、栗ちゃんに酷いことを言われても何となく許せてしまった。
俺、栗ちゃんのことめっちゃ好きじゃん。
「あーあ! 栗原くんかわいそ!! 仲良しだった葵くんに捨てられるんだー!」
彼女が数歩先に進んで、突然そう叫んだ
「捨てないよ!! 何なら西さんと一緒に栗ちゃんも連れていきたいくらいだ!!」
慌ててそう言い返す。
とびっきりの笑顔を浮かべた西さんの表情は、どこか切ない色を帯びているような気がした。
「それ、ちゃんと本人にも言ってあげなよ? いつまでも恥ずかしがってないでさ」
今日言えなかったら、本当に終わり。
こんな大切なことを電子上の文字で片付けてしまうなんて絶対に嫌だ。
「わかってるよ!! 俺のとびっきりの想いをあいつにぶつけてやるよ!!」
「そうこなくっちゃ!」
自分のことのように喜ぶ西さん。どこまでも無邪気で、痛みを知っているからこそ、彼女の言葉には重みがある。
西さんが俺の前に立って、俺に手を差し出すように言う。