花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く

 前の家の自室に比べたら、少しサイズは劣る部屋。畳ではなくフローリング。壁紙は薄いグリーンで、思い切ってインテリアも洋風なものを選んでみた。

 前の家の部屋と真逆のものを作りたい一心だった。


 「ふぅ……」

 少し食べ過ぎてしまってはち切れそうなほど膨らんでいるお腹を撫でながら、ベッドに腰かける。スプリングが大きく跳ね上がって、バランスを崩してしまった。


 「あは」


 何が面白いわけでもないけれど、笑いがこぼれる。箸が転がっても面白い時期ってあるじゃん。

 スマホのメッセージアプリを確認する。

 春樹から7件のメッセージ。開いてみると、今日の課題を解いた写真だった。明日答え合わせするって言ってたのに、待ちきれなくなったみたいだ。あとで俺も解いてみると返信を送って、次のメッセージを確認する。

 栗ちゃんから1件。俺がこっちへ来てからも細々と連絡を取ってくれている。たまに動画も送られてくる。最近はクラスのパリピと仲良くしているらしい。最初は絶対気が合わないからと言っていたけれど、話してみると意外と面白いヤツだったらしい。食わず嫌いはだめだってことだ。

 そしてその下。


 『メンバーがいません』


 味気ないグレーのアイコン。以前のようにカラフルな花のアイコンをこ
のスマホで見ることはかなわなくなってしまった。

 いつだったか、急に消えてしまったのだ。

< 177 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop