花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く


 不思議なことに、放課後になった今、指の痛みが引いたような気がする。

 それがただ痛みに慣れただけなのか、俺の回復能力がすさまじいものなのかはわからない。後者だったらものすごくかっこいいのに。


 「葵、今日も家で勉強か?」

 「うん。ごめんな、付き合い悪くて」

 「仕方ねぇよ、お前ん家ちょっと特殊だし」

 「あんがと。栗ちゃん大好きだぜぇぇ!」


 教室を出ようとしたらドアのところで背後から栗ちゃんに声をかけられた。いつも放課後遊びに誘ってくれるのにもかかわらず、俺はその好意を無下にし続けている。悲しくないかと言われれば、悲しいに決まってる。

その悲しさを振り払うかのように栗ちゃんにブンブンと手を振った。


 「ちょっと保健室に氷返してくるわ。じゃあな栗ちゃん、また明日!」

 「おう。また明日」


 すらりと高い背。栗ちゃんはその持ち前の身長を活かしてバスケ部でエースを担っている。チビの俺からしたら、少し羨ましい。

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