花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
俺は有名な華道家を祖母として持つ家に生まれた。
生まれたときから近くに花があって、いつも色とりどりの花に囲まれて生活してきた。活けるために使う花はもちろん、道端に何気なく咲いている花も大好きだった。
母親はいつでも優しくて、父親はちょっとばかり礼儀作法に厳しいけれど、俺をよく褒めてくれた。
父が花器に花を生けるところはいつみても綺麗だった。シンプルに、花が持つ良さを最大限に活かす。加えて父さんは、必要があれば自分のスタイルを崩すことができる器用さを持ち合わせていたおかげで、厳格な場でも、現代的な場でも、それぞれにふさわしい花を選び活けることができる。上に兄のいる俺の父親は、特に重圧を感じることなくいきいきと華道を楽しんでいた。
状況が変わったのは俺が中学生の時だった。
家を継ぐ予定だったおじさんが、病気で半身まひになったのだ。
普通の家ならば、病床に臥せてしまったおじさんを心配し、看病や見舞いをするところだろう。
俺の家は違った。
祖母の命により全国に散った宗谷家が集められ、数度の集会を開いたのち、華道の才能、世間体、様々なことを考え合わせて、次男である俺の父親が家を継ぐことになった。
あれよあれよという間に、俺の家は崩壊した。