花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
ハンカチで手を拭きながら席に戻ってきた栗ちゃんに声をかけると、彼はすごく動揺したような顔をしてこちらを見てきた。乾ききったはずの手をいつまでもハンカチで拭き続けている。
「どうしたんだよ、そんな世界の終わりみたいな顔して」
「ヤバい」
えらくもったいぶる。彼は自分の机の横にかけてある洗濯ばさみにハンカチを挟んでから、俺の机の上に薄ピンクの封筒に入った一通の手紙らしきものを置いた。
「これ、お前にだってさ……」
「なにこれ」
「見りゃわかんだろ!! ラブレターだよ!!!」
いつになく大きな声で取り乱す栗ちゃん。ぶつぶつと何かを言っているが、全く内容は聞こえない。
手紙の差出人は……知らない人だった。
「さっき便所から出てきたら待ち伏せされてて……宗谷葵くんに渡してくださいって……かわいい子だった……」
みるみる青ざめていく栗ちゃん。
俺のことなのに、なんでそんなにお前が動揺するんだよ。
「葵があの子とキスとかしてるの耐えられない」
「余計なお世話だバァァァァァアァカ!!!」