花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く

 「ごめん」


 少しも考えることなく飛び出した言葉。

 彼女の驚いた顔を見ても、痛くも痒くもなかった。

 俺、最低だ。


 「なん……で、そうだ、少しだけ考える期間があった方がいいよね! 急にこんなこと言ってもびっくりさせるだけだろうし、わたしってバカだなぁ……」

 「どれだけ考えても同じだとおもう。ごめん」


 笑うこともできなかった。

 目を伏せて、はやく彼女がこの場から去ってくれるのを待つことしかできない。


 「あ、あはは……ごめんね、迷惑かけちゃって。ありがとう」


 俺より少し小さい靴が、足元から消えていった。

 パタパタ、どこまでも遠のいていく音に、耳を澄ませる。よく聞くと、洟をすする音がする。

 嫌われるんだろうな、何も考えてくれなかったって。せっかく勇気を出して告白したのに、なんでそんなに酷いこと言うんだって。小さい頃、女の子からの告白を断った俺の友だちが、そうやって責められてたっけ。


 でも、まぁいいや。


 俺は今、頭の中からあの人を追い出すことができないんだから。



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