花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
「遅かったね」
保健室のソファに座って、スマホを見ていた西さんに迎えられる。
「ごめんごめん。ちょっとね」
「どうだった?」
「告白された。付き合ってとも言われた」
「付き合うことにするの?」
「まさか。知らない人だったし。さすがに全く話したことのない人と付き合えるほどテキトーな生き方してるわけじゃない」
鋭い西さんの視線に縫い留められてずっとドアのところに立っていたけれど、そこまで答えてようやく隣に座るように言われた。西さんが、ぽんぽんと自分の隣を叩く。
「かわいい子だったでしょ」
「俺の好みじゃなかった」
「あら、メンクイでいらっしゃるの?」
「そういうわけじゃないけど!!」
いつもの西さんの茶化すような声色に、少しだけほっとする。別に怒られる筋合いはないのだけれど、さっきは限界まで張りつめた糸って感じだったから。
「ていうか、西さん、あの人のこと知ってるの?」
「知ってるっていうか、今日つかちんに写真見せてもらった。大人しそうなタイプだけど、SNSに加工しまくった自撮り写真大量にあげてたよ。清楚系からちょっと露出多めのものまで幅広く。たまに炎上してるみたいだけど」
「マジか」
「つかちん曰く、SNSで自慢するために葵くんを彼氏にしたかったんじゃないかって。さすがにそれは妄想じゃないかなぁって思ったんだけど、ありえない話ではなさそうでさ。ちょっと心配になった」
人は見かけで判断してはいけません、って、こういうことだったのか。
もしあそこで付き合うという選択をしていたら俺もその自撮りに巻き込まれていたんだろうなと思うと、少しゾッとする。