花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く


 「どうしたの」


 ソファの背もたれに凭れてさっきのことを思い出していたら、突然、西さんが俺の肩に頭を預けてきた。そうか、この人はソファに凭れることができないんだ。


 「ねぇ葵くん、今週の土曜日、海に行こうよ」


 囁くように、耳を澄まさないと聞こえないくらい小さい声で。

 それでも、俺の耳は彼女の声を漏らすことなく拾ってしまうというのだから。


 「いいよ」


 今週の土曜は、祖母は遠くに行く用事があると言っていた。

 まだ見ぬ土曜に、胸が躍った。


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