花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く


 そういって、持っていた荷物を全部砂浜に置こうとする。カバンに砂が入ったら後々面倒なことになるから、駆け寄って全部の荷物を預かる。


 「ありがと」

 「どういたしまして」


 手首に嵌まっていたヘアゴムを口にくわえ、髪を丁寧な手付きでまとめあげていく。

 後れ毛も、全部、綺麗にひとつの束の中へ。


 「……ぁ、」


 思わず声が漏れた。

 高い位置で結ばれた髪から覗く、たくさんの花たち。

 この花たちは、太陽を見たことがあるのだろうか。

 横顔が、いつもより柔らかいような気がしてならない。


 「どう?」


 答えなんてわかりきっているくせに、西さんは俺を試したがる。


 「綺麗に決まってる」

 「ありがと」


 荷物を持ったときと同じセリフだけれど、違う。

 少しだけ、声が震えていた。


 「わたし……葵くんが告白されたとき、すごく嫌だった」



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