花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
お父さんが不慮の事故にあってから不登校になったらしい。
いじめにあっていたらしい。
上級生と体の関係を持ったけれど、避妊をしなかったせいで妊娠してしまったから休学しているらしい。
どれも出どころは不明で、真実を知る人は誰もいなかった。以前彼女と仲が良かった人も、現在は連絡を取ることができなくて、心を痛めていたと。
俺は1年のときに一度だけ彼女と少しだけ話したことがあるけど、彼女はとてもじゃないが性に奔放なタイプには思えなかったし、意味もなく連絡を絶つような不誠実さは、そのときは感じ取れなかった。
そんな彼女を前にして、一応学校には来ていたんだなとほっとする。
「体調が悪いっていえば、そうなんだけど。ちょっと厄介なことになっててね。激しく動けないから教室に行けなくて」
友だちに出会ったらはしゃいじゃうでしょ? と子どもをからかうような目で見られる。
「そうですよー。俺は友だちを目の前におとなしくなんてできませーんだ」
わざとらしく口を尖らせてそう言うと、西さんはくすくす笑う。
笑う仕草も、上品だ。動作が大きくてうるさいとよく言われる俺とは違う。
「そういや、なんでカーテン開けようと思ったの? 私、気付かれないように頑張って息潜めてたんだけど」
「あぁ、いや、花の匂いがして、どこかに新鮮な花でもあるのかなぁと思っただけ。生花って高いから、学校にあるの珍しいなと思ってさ。そこらに飾ってある花もほとんどが造花だし」
そういうと、彼女の目が一瞬曇った。ピリっと空気が痺れて、皮膚が引きつれるような感覚に襲われる。