花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
あとは……。
自分の席へ目を遣ると、楽しそうに話している西さんと我が大親友。
何の話をしているかは全くわからないけれど、ふたりともお腹を抱えて笑っている。栗ちゃんに至っては呼吸困難になっているじゃないか。
「なに話してんの」
ふたりのもとに戻っても、俺そっちのけで笑い続けている。
「あぁ葵っ……っ、無理だって、ちょ、西ぃ、」
「栗原くんがっ、やってみようって言いだしたんじゃんかぁ……」
息も絶え絶え。ふたりして笑って、燃料が切れてきたころに俺の顔を見てまた笑う。
「なんだよ」
少し離れていた隙に何が起こっていたんだ。いつまでも仲間外れにされてちゃ、こっちだって寂しい。
「これ、お前にやるよ」
そういって目の前に差し出されたのは、栗ちゃんが今日の昼飯のデザートにする予定だと家から持ってきたアライグマのマーチ。
「いいのかよ。これお前のだろ」
「このオレが良いって言ってんだからいいんだよ」
まぁ3人そろってるし、みんなでわけるか。
突然のことに戸惑いを覚えながらも、彼の親切を無下にすることはできない。そう思って箱から銀色のパッケージを取り出して、袋を開けたときだった。
「なに、これ」
中から出てきたのは様々なアライグマが描かれた小さなお菓子ではなく。
黒い、ひとつの大きなチョコレートのかたまり、のようなもの。