花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
「栗ちゃんって、部活の中では頼れる兄貴分なんだな」
「まぁな。てか教室の中でも十分に頼れる兄貴分だろーよ」
帰り道、栗ちゃんの自転車に荷物を全部載せてもらって、俺は隣を同じ速度で歩く。カラカラカラとタイヤが回る音、真横を車が通りすぎる音、栗ちゃんの良く通る俺より低い声。
いつもの放課後より、少しだけ騒がしい。
「今日のあのアライグマのマーチ事件、やろうって言いだしたの西の方なんだぜ」
「マジ? 西さん意外と面白系のお遊び好きなんかな……ってか栗ちゃんいつの間に西さんのこと呼び捨てにするようになったんだよ」
いつの間にか、本当にいつの間にか。今日俺が学校に行ったら呼称が変わっていた。
「お前ら、付き合ってんだろ?」
「おぉ……おう」
「おめーの口からはひとっっっつも聞いてないけど」
西さんから聞いたからよかったものの……と栗ちゃんが呟く。高い位置から責めるような視線が降ってきた。この顔が真横にいるのは今年で2年目だけど、まだ慣れない。ふとしたときに顔のきれいさに驚く。
「お前の彼女ならオレの友だちだろ? いつまでも距離あるような接し方したくねぇなと思って変えてみた。文句は受け付けない」
「文句なんかねぇけどよぉ……」
それで変えられるって、栗ちゃんの適応能力高すぎだろ。
「俺らって、そんなにわかりやすい?」
「おう。葵より西の方が変わったな。距離が近くなってる」
「やっぱりかぁぁ……」
やっぱり。俺だけが気づいた西さんの些細な変化じゃなかった。昼休みだって俺の肩に手を置いてきたり、体が触れ合うほど近かったりすることなんて何度もあった。
昼に口止めした意味なかったじゃんか。俺の努力を返せ。
「なかなか可愛いとこあるじゃん、葵のカノジョ」
「可愛いとこしかねーよ」