花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く

 俺もかなり重症だなと思う。イマイチ西さんに対して本気で怒れないし、いたずらをされても許してしまう。惚れた弱み? みたいなやつなのかな。


 「てかさ、付き合うのはやくね? この間話すようになったばかりじゃん」

 「あー、まぁ、そうだけど、そうじゃない、みたいな」


 歯切れの悪い返事しかできない。

 確かに、俺と西さんが親しくし始めたのはついこの間の話だけれど、何度も言うように俺と西さんは1年のときに話したことがある。

 ただその話を栗ちゃんにすると、俺たちは家に帰ることができなくなるくらい長くなるから、割愛させてもらおうという魂胆だ。


 「まぁいいけど。オレも人の恋愛にとやかく文句言いたくねぇし、お前がテレテレしてんのとかもっと見たくないし」


 ひどい言い草だ。

 そうこうしているうちに俺と栗ちゃんに別れが来てしまった。


 「んじゃあな、栗ちゃん。また明日」

 「また明日。気を付けて帰れよ」


 自転車に勢いよく跨る栗ちゃんを見届けて、俺はとぼとぼと駅へ向かう。俺の学校は最寄り駅から遠いことで有名だけど、校舎がきれいだったり、そこそこレベルが高かったりするおかげでなんとか毎年生徒には困らないでいるらしい。


 「さてと、」

 栗ちゃんには話さなかった思い出が、俺の頭でグルグル渦巻いている。

 今晩寝られなくなったら、明日あいつに一言文句でも言ってやろう。


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