花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
「あの、ごめん、俺、何か気に障ること……言った?」
前に栗ちゃんが『女の心はわからん。笑ってたと思ったら次の瞬間には泣いたり怒ったりしてんだ。何がダメだったか自分で考えろってよく言うけど、考えたってわかんねーから訊いてんだろうがっていつも思うんだ』と言っていたことを思い出す。確かに、女の人の心は移り変わりやすい。でもそれは男だってそうだ。
「あの、西さん?」
「葵くんってさ、」
それだけ言って、西さんはまた口を噤んだ。葵くんって、なんだろう。次の言葉を待っていると、西さんが不思議そうな顔をして俺を覗き込んできた。
「普段は遠慮のない元気な男の子って感じなのに、どうしてそんなにビクビクしてるの?」
今度は俺が黙る番。これは仕返しだろうか。痛いところを突かれてしまえば、もう何も言えなかった。
「誰にでも訊かれたくないことってあるよね。まぁ私のは大したことじゃないんだけど、なんだか、」
葵くんは、息がしにくそうだなって思っただけ。
彼女にそう言われてしまえば、俺はもう笑うしかなかった。
「そんなことないよ。俺は毎日楽しく過ごしてるよ」