花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く

 「ねぇ西さん、」

 「なぁに?」


 好奇心、というか、知っておきたかった。

 ずっと彼女のそばにいるためには、何も知りませんでしたと言いたくない。


 「背中……ちょっとだけ見せてもらっていい?」


 その言葉に、西さんの体がぴくりと動く。さっきまでの中途半端な眠気も飛んで行ってしまったのか、せわしなく視線が動いているのが目に入る。


 「いい、けど……気持ち悪いとか、言わないでね」

 「言うわけないよ」


 その言葉を合図のように、西さんが自分の髪をまとめて右側に流す。

 首元から少しだけ覗いたそれで十分だった。

 皮膚を突き破ってあらわになっている茎に、色鮮やかな花が咲いている。


 これで痛くないなんて、うそだろ。


 「ありがと。ごめんね、嫌な思いさせちゃって」

 「別に、嫌じゃないけど……いきなりどうしたの」

 「んー、好きな人のことはしっかり知っておきたいなって思っただけだよ」


 彼女の形のいい頭をポンと撫でる。気持ちよさそうに目を細めるものだから、たまらなくなってもう一度、今度は俺から唇を重ねた。


 「さっきのお返し」


 彼女の目を見て笑いかけると、真っ赤になって目に涙を浮かべていた。


 「キスしてもらうのって、うれしいね」


 俺たちにとってのキスと、他のみんなにとってのキスは、たぶん重みが違う。

 互いの熱は、俺たちにいつだって終わりをちらつかせるんだ。

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