花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
学校から家に連絡が来るほど多くの人に迷惑をかけたことはこれまで一度もないし、いわゆる不良グループと言われる人とつるんだこともない。
「すみません、心当たりはありません」
「あなたの部屋を佐藤に掃除させたのです」
余計なことを。俺が毎日掃除しているから部屋には目立ったホコリなんてないはずだ。ものを乱雑に置いているわけでもないから片付ける必要だってない。
「あなたの部屋に置いてあった本、あれは何なのですか」
本? 置いてあった?
目につくところにある本は机の上の教科書くらいで、小説は全て見えないようにベッドの下の収納ボックスに入れている。部屋の掃除をさっとしたくらいでは見つけられるはずもない。
「佐藤に細かなところまで掃除するように言ったのですよ。そしたらベッドの下から一冊の本が出てきました。文豪の名作に混ざって一冊の軟派な本が」
やられた。
これは佐藤さんに『掃除をさせた』んじゃない。
俺の粗探しをするために佐藤さんに『部屋を漁らせた』んだ。
膝の上でぐっと拳を握ると、得意になったように祖母が続ける。