花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
肩を上下させて俺をにらみつけ続ける。大方、俺につかみかかりたいけれど体が不自由になってきたせいで動けずにもどかしい思いをしているのだろう。
言いたいことを全て言い切った罪悪感なんてものはない。これまで俺が祖母につけられた傷に比べれば、祖母の傷心なんてものは擦り傷にもならない。
「幸枝先生! どうなさいましたか!!」
「佐藤! はやくこの子を家から出しなさい!」
「ですが、葵さまにもご家族というものがあります」
「そんなことどうでもいい! こんなのと同じ空気を吸っていると気分が悪くなるわ!!」
癇癪を起した子どものように叫び散らす目の前の老人を、俺はただひたすらに哀れだと思った。
なんの感情も湧いてこず呆然としていると、更に足音が増えてきた。
どっしりと重みのある足音、細かく刻まれる足音、ふたつに比べて軽い足音。
ひとり、ふたり、さんにん、と障子から顔を覗かせる。
「葵っ……、なにを……」
「父さん、」
慌てた顔の父さんは佐藤さんに押さえつけられる祖母を見て、崩れ落ちるように膝を折った。
「葵……、ごめんな、これまでずっと居づらかっただろう」
「…………」