花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
何も答えられない。
居づらくなかったと言えば真っ赤な嘘になる。けれど、ここで正直に答えてしまうと今まで浴びてきた辛さとか悲しさでどうにかなってしまいそうな気がしてならなかった。
「クソババア……」
後ろでひまりが小さく呟いた。小学生にこれほど悲しそうな顔をさせてしまったことが、何よりも俺の胸を痛めた。
「葵、ちょっと離れの方へ行きましょう。大事なお話があるの」
目に涙を浮かべたお母さんが、母としての最後の力を振り絞って俺たちを祖母から引きはがした。障子を閉める間際まで祖母は佐藤さんに押さえつけられていて、彼女はただの弟子なのに随分迷惑をかけてしまっているなと、申し訳なく思った。