花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
この間先輩たちに連行されていった人間と同一人物とは思えないかっこよさ。
何度も何度もその動画を見て、やっと返した言葉が『さすが。おめっとさん』だけだったのは、まぁいわゆる照れ隠しってやつだ。
メッセージの返信をして、ネットニュースを見て。もうこの板には用はない。
ぼーっとしていると、遠くから何か大きな陶器が割れるような音が響いてきた。
そのあとに佐藤さんと思われる人の声と足音が聞こえる。
まぁ、大方祖母が癇癪を起しているのだろう。
昨日の今日だ、無理もない。
逆になんで自分がここまで落ち着いているのかが不思議なくらいだ。
30分くらいドタドタとあわただしい音がしていたけれど、それもすぐに止んだ。もう若くないから暴れる体力もないのだろう。いい年して、少しくらい落ち着けばいいのに。
机の上に置かれた「養子縁組について知ろう」とえらくポップな字体で書かれた紙を持って縁側へ移動する。
文字に目を通していたのは、ほんの数分。何度も何度も同じところを辿ってしまって、話にならなかった。
雨のせいか、少しだけ肌寒い。じわじわと体温が奪われていく感覚が妙に心地よくて、気付けばそこで少し遅めの二度寝をしてしまっていた。