カラフル☆デイズ
「じゃあ、これからは深月先輩って呼びます」
「どーぞ」
あーもう、悔しいな。自分の名前を呼ばれた時だけじゃなくて、先輩の名前を呼んだ時ですら、私の方がドキドキするなんて悔しすぎる。
「深月先輩、深月先輩、深月先輩」
この悔しさをどう処理すれば良いのか判らなくて、先輩の名前を連呼してみる。
がむしゃらに連呼すると、さっきみたいなドキドキは薄れて、代わりに、いつの間にか口元が緩んでいた。
「ホント、変なヤツだな」
まるで珍獣でも見る様に、物珍しそうに、そしてどこか可笑しそうな目で、先輩が私をまじまじと見つめてくる。
「深月先輩の所為です。これ以上先輩と話してると、本当に変になりそうなので、もう行きますね!」
先輩の脇をすり抜けて、その場から立ち去ろうとする私に、先輩が声を投げかけてきた。
「転んだり、壁にぶつかったりしない様に気を付けろよ、まひる」
深月先輩が、からかいの中にも優しさを見せるから、私の名前を呼ぶ声が思いのほか柔らかかったから
だから、またしても唐突に高鳴った心臓に、一瞬、歩く足が絡まりそうになった――。