カラフル☆デイズ
ソファから立ち上がって、あさ兄を見上げる。
いくら兄妹とはいえ、こんなに近距離で正面からじっと見つめ合うこともそうない。
「――朝陽」
名前を口にした途端、妙に静まり返ってしまったこの空間と、いつもと違った呼び方にドキドキするというよりは気恥ずかしさを感じてしまう。
「……って呼ぶと、何だか恥ずかしいね!」
笑って誤魔化した私に、あさ兄が片手で自分の口元を覆った。
「あさ兄?どうしたの?」
もしかして、あさ兄も名前を呼ばれるとドキドキするとか?
「や、何でもない」
珍しく構うなとでも言う様に、あさ兄がもう片方の手のひらで、私を追い払う仕草をする。
「あさ兄も、名前を呼ばれるとドキドキするんでしょう?ね?そうでしょう?」
あさ兄の反応に仲間意識みたいなものを覚えて、嬉しさの余り腰元にまとわりつく。
「……“あさ兄も”ってことは、他にも誰か同じ反応をしたヤツがいたってこと?」
こんな時でもあさ兄は、すかさず鋭い嗅覚を発揮してきた。