カラフル☆デイズ
兄の存在
家に着いてすぐに、ローファーを玄関で勢いよく脱ぎ捨てる。
その反動で右の靴が飛んで、少し離れた場所へと落っこちた。
だけど、今はそんな行儀の悪さなんて気にする余裕はなく、そのまま自分専用のスリッパに履き替え、わざと足音を立ててリビングへと向かった。
「――あさ兄!!」
そう叫んでドアを開けると、真っ先に目に入ってきたのは、あさ兄の太陽みたいな笑顔。
「おかえり、まひる」
あさ兄はスラリと長い足を組んでソファに座ったまま、片手に持っていたマグカップを軽く持ち上げた。
私がこんなにも、全身で怒りを露わにしているというのに、微塵も気にしていないこの態度。
きっと、私が怒って帰ってくることまで含めて、全部お見通しだったに違いない。
その上でここまでの余裕を見せつけられていると思うと、余計に腹が立つ。
ふてぶてしい、厚かましい、図々しい
あさ兄の態度を見ていたら、それらの言葉が頭の中を駆け巡った。
「昨日、水上くんにふざけたこと言ったの、あさ兄でしょう!?」