カラフル☆デイズ

「きっと甘党の先輩は、たまご焼きも甘めの方が好きなんじゃないかなって思ったんですけど、当ってたみたいで良かったです」


さっきの『旨いな』の言葉に胸を撫で下ろした私に、先輩は最後の一切れを食べ終えると「確かに甘党ではあるけれど」と、前置きをする。


「でも、どっちかって言うと、たまご焼きは出汁(だし)巻きの方が好きだけど」


「え、そうなんですか!?」


私の言葉に、先輩が遠慮なく頷く。


「――けど、うちの母親が作るたまご焼きも甘かったから、久々に食ったら何だか懐かしくなった」


過去形で話す先輩の言い方に引っ掛かりを感じて、つい訊かずにはいられなかった。


「もしかして、先輩もお母さんが……いないんですか?」


私の問い掛けに、深月先輩は少しだけ眉間にシワを寄せて、困った様な寂しそうな、そんな表情で曖昧に頷いた。


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