カラフル☆デイズ
いつものあさ兄みたいに、馬鹿なことを言ってふざけてくれた方が、よっぽど良いのに。
内心ため息を吐き出しながら、私の耳を覆っていたあさ兄の手の甲をギュッと抓った。
「……った」
あさ兄が短く声を上げ、私の耳から手を放すのと同時に、私もあさ兄からパッと離れた。
「まったく!いつまで触ってんの?セクハラあさ兄。さっさと買い物に行くよ、セクハラあさ兄」
「セクハラ!?まひる、セクハラの意味ちゃんと判って言ってる?」
ピアノ線みたいにピンと張っていた空気が緩んで、いつもみたくセイ兄があさ兄に軽口を叩く。
「いーから早く買いに行って来いよ、セクあさ兄」
「俺がセクあさ兄なら、お前はセイハラ兄だからな?」
「はあ?俺はまひるにセクハラ呼ばわりされてないんだけど。一緒にすんな」
兄二人の会話が低レベル過ぎて頭が痛くなりそうだけれど、いつもの和やかな空気に戻ったことにホッとして自然と口元が綻んだ。
「じゃあ、俺は今からまひるとデートしてくるから、静夜は一人、家で羨ましがりながら待ってな」
なぜか勝ち誇った様に、セイ兄にそう言ったあさ兄のセリフには、口の端が引きつってしまったけれど――。