カラフル☆デイズ
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いつもなら、家の近くのスーパーで買い物をするのだけれど、今日は少しだけ離れた場所にあるデパートで買い物をするらしい。
鼻歌まじりにご機嫌で車を運転するあさ兄の横で、『そういえば、あさ兄と二人で出掛けるのも久しぶりかも』なんて、少しだけわくわくしたのが馬鹿みたいだ。
店内で、「こうしてると、俺たちって新婚さんみたいだよね」と、頭が沸いたとしか思えないことを言い出した時点で、私は早くも一緒に来たことを後悔していた。
ここは家じゃなくてお店の中だから、いつも家に居る時みたいに怒ったり、騒いだりしちゃ駄目だって判ってる。
判ってはいるけれど、これ以上我慢していたら口の端が痙攣し過ぎて、明日には確実に口の端が筋肉痛になってしまう。
それどころか、こんなあさ兄の話を黙って聞いていたら、耳も頭もおかしくなりそうで――。
「さっきから聞いてれば、“デート”とか“新婚”だとか、不適切な単語を使うのは止めてよね!」
心の中では長ねぎの束で叩くか、玉ねぎを投げつけるかしたかったけれど、実際にはあさ兄の苦手なトマトを買い物カゴに入れるだけに留めた。
それを見たあさ兄が、無言でトマトを元の位置に戻そうとした時、ふとその手が止まった。