カラフル☆デイズ
あさ兄の友人ということに加え、相手は一度見たら忘れられないくらいの美形だから、私の中で強く印象に残っていたけれど、正直、向こうが私のことを覚えているとは思えない。
私の反応につられて反射的に足を止めてしまっただけかもしれないけど、目の前の相手の表情からすると、どうやら覚えていてくれていたらしい。
記憶の中から、この男性の名前を手繰り寄せる。
「あっ、えっと……伊月さん、ですよね?」
私がそう言うと、伊月さんは微笑んで頷き、その背後からは女性の声が聞こえた。
「伊月さん、私、先に行ってますね」
顔は見えなかったけど、少しだけ不機嫌そうに聞えた女性の声に、伊月さんはさして気にも留めず軽く頷き返す。
千紗も店内から出て行く彼女を目で追った後、「まひる、私は帰るね?」と気を利かせてくれた。
気を使わせたことに「ごめんね」と謝ると、楽しげな口調で「今度、詳しく聞かせてもらうからね?」と、私の耳元に一言残して帰って行った。