カラフル☆デイズ

知ったからと言って、私なんかが今更どうにかしてあげられることはないけれど、それでも、少しでもいいからあさ兄のことを知りたかった。


あさ兄が私たちの為に大学を辞めたあの日から、ずっと、私の心の中に引っ掛かっていたこと。


あさ兄本人は、聞いたところで本心を話してくれるはずがないと、直接聞いたことはなかった。


だけど、このことに関するあさ兄の真意が知りたかったから、私の知らないあさ兄を知る伊月さんに、どうしても訊ねずにはいられなかった。


伊月さんは、「どうだろうね。深山の本心は、僕には判らないけど……」と言って、少しだけその場で考え込んだ。


「でも、そうだな……まひるちゃんが笑顔でいてくれれば、それだけで報われるんじゃないかな」


僕だったらきっとそう思うよ、と微笑んだ。


セイ兄も、私が笑ってるだけで救われるって言ってた。


そんな単純なことじゃないと思うのだけど……。


「あの…… 男の人って、意外と単純なんですか?」


私の言葉に、伊月さんは「意外と、というか、意に(たが)わず、ね」と愉快そうに笑った。



< 371 / 420 >

この作品をシェア

pagetop