カラフル☆デイズ
お肉コーナーに到着したところで250gのひき肉を1パックを手に取り、『特別だからね、セイ兄』と心の中で呟きながら、あさ兄の持つカゴの中に入れた。
耳だけは、「そういう恋はしそうにないヤツだったんだけどな、」と、伊月さんのことを話し続けているあさ兄に傾けたまま。
「ちょっと意外っていうか……報われない恋に落ちるってのも、まぁ、軽く不幸ではあるよな」
不幸……?
あさ兄にとっては、叶いそうもない恋に落ちるのは不幸なことなのかもしれないけれど――。
だけど、そうじゃないかもしれないのに。
「そうやって、他人の幸せを勝手に決めるのは良くないよ?」
「まひるには、まだよく判んないだろうけど、判んないままでいいからな」
あさ兄はフッと目を細めると、諭す様に私の頭をポンポンッと軽く撫でた。
確かに私は恋愛自体したことがないから、あさ兄の言うことを強く否定することは出来ないけれど。
「ってゆーか、あさ兄が私の恋愛の邪魔ばかりするからでしょ!」
もし、私も報われない恋をすることがあったのなら、その時にはあさ兄が言う様に、やっぱり不幸だと、やっぱり恋を知らない方が良かったと、そう感じたりするのかな……?
あさ兄に「いい加減、邪魔するのはやめてよね」と抗議しながら、恋愛経験のない私はぼんやりとそんなことを思った。