カラフル☆デイズ
彼の名前
「あーぁ、次は移動教室か。面倒くさいなぁ」
一通りメイクを直し終えた千紗が、ふぅ…と息を吐き出した。
5時間目は選択科目で、音楽、美術、書道の中から、私と千紗は書道を選択している。
毛筆や硬筆の書写検定を受けて資格を取ることだって出来るという点で、美術と迷って書道を選んだ訳だけど――。
「うわ……今日、習字道具忘れてきちゃった!」
先週までは硬筆ばかりしていたから、今週から習字道具を使うことをすっかり忘れていた。
高校で習字をする機会なんて、選択科目くらいしかない為、習字道具を持ってきてる人自体、そういない。
少なくとも、私の友達の中からは、借りる当てなんて見つけられそうもない。
「どうしよう……」
「静夜先輩は?」
セイ兄が習字道具を持ってる訳がない――と思ったのだけれど。
千紗曰く、『この前の選択授業の時、私たちと入れ替えで静夜先輩たちが書道室に入って来たじゃない』とのこと。