カラフル☆デイズ
私はそんなことがあったことを覚えていないどころか、セイ兄と入れ違いになっていたことにすら気付いていなくて。
だけど、目敏く、記憶力も良い千紗の言うことだから、きっとその通りなんだと思う。
千紗の言葉を信じて、気合いを入れて三年生の教室へ向かった。
一人で上級生のクラスに向かうのは、かなりの勇気が要るのに、肝心の千紗は、スマホで彼氏とのやり取りに夢中で付き添ってくれないし……!
セイ兄の教室の前に来て、【3―C】と書かれたプレートを見上げる。
よし、と勢い込んだものの、どうやってセイ兄を呼び出そうか迷い、開け放たれたままの入り口からこっそりと中を覗き込んだ。
お昼休みだからか、教室には1/3くらいの人数の生徒しかいなくて、人はまばらだ。
「セイ兄、いない……」
もしかしたら、学食に行ってるのかも。三年生は学食でお昼を食べる人が多いし。
わざわざ学食まで赴くのも面倒だし、かと言って、セイ兄が戻ってくるまでここで待つのも嫌だし、どうしよう……。
一歩後退りした瞬間、背中に何かが当たった。