カラフル☆デイズ

その人の背中に向かって無意識に伸ばした右手が、ブレザーの裾をしっかりと掴んだ。


相手の身体が少しだけ(かし)いだけれど、すぐに持ち直して、こちらを振り返った視線には不機嫌さが露わになっている。


「……何?」


声のトーンからも、不愉快に思われていることが伺い知れた。


カチンときてとっさに引き止めてしまったけれど、いざ正面から訊ねられると、どうして良いのか判らなくなって――。


「あ、あのっ!習字道具、持ってるなら貸してもらえませんか?」


「――は?」


男の人が、今度は呆気に取られた表情を浮かべた。



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