カラフル☆デイズ
パタンと音を立てて静かに閉まったリビングのドアを、まるであさ兄の背中を睨むみたいに無言で見つめる。
ああやって、サラッと笑顔でかわされた瞬間は、いつもあさ兄が遠い存在に感じられて、心許ない気持ちになる。
置いてけぼりにされた小さな子供みたいな。
あの日のお父さんみたいに、もう戻ってこなかったらどうしようと――そんなことまで考えてしまうほど。
「まひる、いい加減、朝陽が夜に出掛けて行く時にそんな顔すんの、やめろって」
セイ兄が、すぐ側にあったソファにどかりと座り込んだ。
「だって、セイ兄は心配じゃないの?あさ兄、身体壊しちゃうよ……」
あさ兄は、普通のサラリーマンと同じで朝から夕方までは、中堅の化粧品メーカーで営業の仕事をしている。
大学中退後、知り合いのツテで今の会社に中途採用してもらい、営業の部署に配属されてからというもの、外見に負け時劣らずの人当たりの良さも手伝って、今ではいくつかのお得意先を任せられるまでになっているらしい。
仕事のことをあさ兄は普段話さないから詳しくは知らないけれど、営業だからインセンティブも加わって、そこそこお給料は良いと思う。
それなのに、週の半分くらいはその仕事を終えた後、一度家に戻ってきて着替えを済ませると、今度は深夜まで別の仕事へと出掛けて行く。