カラフル☆デイズ

頼むから余計なことは言わないで欲しいと念じていた私を、水上くんはチラッと見た後、「あー…うん……」と、気まずそうに小さく笑った。


「まぁ、そうなんだけど……って言うか、深山さんって彼氏いたんだね、社会人の」


……うん?


“深山さん、彼氏いたんだね”?


自慢じゃないけど、彼氏なんてこの十六年間、一度だっていたことがないんですけど?


水上くんは、一体誰の話をしてるのだろう……?


会話の流れを把握できずにいる私をそのままに、水上くんはそそくさと自分の席――私の斜め後ろへと去って行ってしまった。


「まひる、大丈夫?……えっと、その、ごめんね?」


余計なこと言っちゃったかも……といった表情でわずかに首を竦めた千紗が、上目使いで私の顔を覗き込む。


大きな瞳に長い睫毛の千紗は、普段から可愛いだけあって、この手の可愛い仕草をすると、他の人のそれよりもパワーを帯びて威力を発揮する。


だから、その時は千紗の可愛さに気を取られ、気付かなかったんだ。


千紗の「ごめんね?」の本当の意味を。

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