カラフル☆デイズ
「静夜先輩ー!」
千紗が人目を憚らず、高い声を上げる。
その声に、廊下を歩いていたセイ兄が私たちの方を振り返った。
「チィは、相変わらず元気だな」
「そのチィって呼び方、いい加減やめてくれません?“せーちゃん”」
「せーちゃん言うな」
セイ兄が嫌そうに、軽く唇の端を噛む。
私と付き合いの長い千紗は、当然セイ兄との付き合いも長く、昔はよくセイ兄のことを『せーちゃん、せーちゃん』って呼んで慕っていた。
だけど、先輩後輩の上下関係がハッキリする中学生になった途端、千紗はセイ兄のことを『静夜先輩』って呼ぶ様になり、喋り方も敬語に変化した。
セイ兄が中学生になってから、同級生や後輩からだけでなく、女子の先輩からの人気も出た所為で、以前の様に馴れ馴れしく話すことで、先輩たちから変に目を付けられるのが嫌だったらしい。
妹の立場にいる私は、そういう意味で変に絡まれることもなく、千紗も私と一緒の時だけ、時々こうしてセイ兄と接触を試みようとする。