カラフル☆デイズ
「まひる?どうかしたのか?」
セイ兄が私の様子に気付いて、周囲を見渡す。
どうかしたのか、なんてこっちが訊きたいくらいだ。
どうして、あの人を見つけることが出来なかっただけで、残念な気持ちになってるんだろう……?
「ううん、ちょっと考え事してただけ。それより千紗、早く行かないとパン売り切れちゃうよ?」
購買でパンを買う予定の千紗を促すと、すっかりそのことを忘れていたのか、「そうだった!」と弾かれた様に声を上げた。
「じゃあね、セイ兄」
「静夜先輩、またね」
私と千紗が声を揃えてセイ兄に背を向け、足早に廊下を進む。
「私、お財布持ってきてるから、このまま購買に行ってもい?」
千紗がブレザーのポケットから、四つ折りの小さな財布を取り出した。
スマホにお財布と、必要な物が次々と出てくる千紗のポケットが、四次元ポケットに見えてくる。さすがに、パンまでは出てこないみたいだけど。