研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
そんな彼女を見兼ねたハンナが意味ありげに口角を上げる動作に見覚えがあって、思わず背筋を伸ばす。
「イリア様、その顔は意中の人がいらして?」
「そっそんなことないよ!私はただ嫁ぎ先を見つけるのに必死なだけ」
その同様っぷりに少女達の目は怪しく光る。
「そんなの建前の話でしょう?ここでは本音を吐いても誰も咎めませんよ」
舌なめずりをして肉に食らいつく前の獣のような目は、イリアを逃しはしないと圧をかけてくる。
そんな圧から逃げる方法は誰からも教わってはおらず、渋々自分の中にある悶々とした気持ちを吐き出すことにした。
「恋愛をしたことがないの。その、人を好きになるという感覚がまだ分からなくて」
「それで?」
「うっ……」
まだ本音の奥底まで吐き出してないだろうと、ハンナが畳み掛けてくる。
「……とある相手にむず痒くなったりはするの」
「なるほど……それはまだ断定が出来なさそうな立ち位置ですわ。ですが、きっとその気持ちの答えはすぐに見つかったりもしますよ」
ハンナが紅茶を啜り茶菓子を口元に持っていくが、食べる直前で動きを止めた。