研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
何かを遠く見つめるように目を細めて、うっとりしたその顔は何処かで見たことがある。
ーーお母様がお父様に向けていた顔に似てるんだ。
誰かを想う時、人は自然と顔にその気持ちが現れてしまうものだと幼き頃に、母エヴィリアに言われたのを思い出す。
人は恋をすると優しさを司る妖精がやって来て、一つの種を心に植えていくんだと言う。その種が成長して花になった時、想いは通ずると、御伽噺のような話を寝る前に聞かされていた。
きっとハンナにも想い人がいて、その人のことを考えると自然と顔が緩んでしまったのだろう。仕返しにとはいかないが、イリアもハンナに同じように尋ねた。
「ハンナ様も好きな人いるのね?」
「べっ別におりませんわよ!?」
「ハンナったら素直じゃないんだから」
「イリア様、ハンナはこのお茶会ではいつも好きな人について語ることが主で……」
「貴方達だってそうでしょうっ!」
頬を赤らめて怒るその仕草は恋に素直になれない可愛らしい乙女だ。
小さく笑ってそのやり取りを眺めていると、ふとこの楽しい光景をヒューリに伝えたくてしょうがなくなった。
この花園で咲く綺麗な薔薇の花のことも、美味しいお茶菓子のことも、ここで話す仲間のことも全部会って話したい、そんな感情が芽吹いた。