研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
イリアがいつもカデアトから帰る道筋へ進み、大きなクリスタルが姿を表す広い空間でクリスタルに守られるように存在する、奥へと進む道をヒューリが示した。
ドラゴンに乗ったままでは入ることの出来ないその場所へは、自分達の足を頼りにその道へと進んで行く。
「よくもまあ、こんな場所見つけたわね」
「俺だって研究の力になりたくて色々散策していたんだ」
「村の若長が、こんな掟破りにも近そうな場所に来ていたなんて知れたら暫くの間は村の外に出るなとか言われそうだね」
「ルガ、絶対親父には言うなよ」
念を押すように低い声で返すと、ルガの肩が小さく震えたような気がした。
光を通さない暗い道は湿っていて、よく耳をすませば水滴が零れ落ちる音が響いて聞こえてくる。
ヒューリの炎の魔法によって道が照らされ、彼を先頭にして奥へと慎重に進んでいく。
なにか聞こえそうで聞こえない耳の感覚に辺りを見渡していると、暗闇の奥が一気に広がった。
火の魔法から光の魔法へと転換させると、そこに広がっていたのはクリスタルに囲まれた辛うじて形を保つ青白く光る遺跡が存在していた。
光を乱反射させるクリスタルが一気に空間を照らし出した。
「すごい……」
小さな声で呟いたというのに音を吸収した空間はその音を吐き出すように、イリアの声を響き渡らせていく。
全て聴き逃しはしないとでも遺跡が言っているようで、無意識に唇を固く閉ざした。