研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
遺跡の周りを取り囲むような泉を覗けば、どこまでも続くエメラルドグリーンの水が悠々と泳いでいた。
苔むした遺跡は誰も近寄らぬ土地となっても尚、植物という命は尽きることはない。静かに息をする遺跡は、今もここでひっそりと命を燃やしていた。
空気すらも神秘的な何かを感じるこの空間に、緊張と少しの興奮が混じる。
慣れた足取りで進むヒューリの後ろをついて歩くと、遺跡入口の壁にはびっしりと何かが掘られている。
「これだ」
示された箇所をヒューリがなぞるように指を動かすと、光の礫がそこへと集まってくる。
「本当、あの頁の続きが書いてある」
「どうしてこんな所に……」
壁を真剣に見つめるナルとルガに続いて、イリアもその壁を見つめた。
ーーあれ……?
古代文字については二人に任せてあるせいで、イリアはこの文字を一切知らないというのに馴染みのある文字がそこに掘られていた。
「森とこの地を繋ぐ女神の涙は、獅子王の剣に眠る。真なる繋ぎが表れし時、大空へと竜を誘うであろう……」
イリアの普段書きなれた文字とは書体は古いものの、読めないことはない。
カデアトという地下世界にどうしてイリアの読める文字が存在するのかは分からないが、壁に書かれた文字を忘れる前にメモに残した。