研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
元気そうなイリアの姿にヴァイルは鼻を擦りつけてきて、その相手をしているとふと明日の予定のことを思い出す。
「そう言えば、私明日はここに来れないの。研究も大詰めに近いのに、ごめんね。明日はのんびり過ごしていて」
舞踏会という初めての場に赴くのは中々に緊張するものはあるが、この研究と同じように成功させなければいけないイリアの大きな課題だ。
胸を張ってヒューリ達に明日のことを報告出来るように努力してみるつもりではあるが、心の奥底に何かが疼く。
外にも優しい世界が広がっていることを知ったのだ、何も怖がる必要もない。
そうと分かっているのにも関わらず、正直不安は付き纏う。
ーーそれに、ヒューリに会えないのがすごく……寂しい。
令嬢としての特訓の日々も疲れ果てることが多かったが、その日の夜にはヒューリに会って安心感に包まれて過ごせる時間があった。
ただ明日の舞踏会は夜に開催されるため、ここに来る時間はない。たかが一日会えないだけの小さな辛抱だというのに、今のイリアには苦しい程に切ない。
手を伸ばせば触れられるその距離にいるヒューリがとても遠くにいるような気がして、目頭が熱くなった。
ーー頑張るって決めたじゃない。後ろ向きな考えは駄目よ。
心の中で自分を叱咤し、ヒューリに向かって手を振って立ち去ろうとしたその時だった。