研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
優しさに包み込まれるようにそっとヒューリがイリアを抱きしめ、大切な何かを壊さぬよう優しく背中に力を込めてきた。
その温もりが心地よくて、熱くなった目頭から不思議と涙が一つ溢れた。
「俺はここで待ってるから。イリアをずっと待ってるからな」
「うんっ……」
その温かさに甘えるように、イリアは彼の胸に自分の顔を押し当てて、彼から流れてくるその不思議な力を受け止めた。
暫くの間二人はただ黙って抱きしめ合い、流れる夜風が二人を眺めるように吹き抜けて行った。
ーーなんて温かいんだろう。
目の前にいるヒューリの鼓動が伝わってきて、イリアの鼓動と重なり合う。
先程まで感じていた切なさはもう何処かへ消え去り、イリアには穏やかな気持ちが広がっていた。
そっとヒューリの胸から離れると、一瞬だけ彼の腕に力が入ったがすぐさま腕を解いた。
「ヒューリ」
「どうした?」
「ありがとう。また明後日ね」
「ああ。またな」
その返事に笑顔で頷いてイリアは振り返ることなく、家へと向かうための道へと駆け出した。