研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
家を出る直前にエリーは、エルメナから叩き込まれた全てを披露するつもりで挑んできなさいという一言を残しイリアを見送った。
その言葉の通りこの屋敷に着くまでは自信満々であったが、場の空気が違うことに回れ右をしたくなるのをぐっと堪え、現在もこうしてこの場に居座っている。
ダンスを誘ってくる相手もおらず、イリアも自分自身からは動けるはずもない。
「はあ……」
思わず零れたため息に慌てて背筋を伸ばして深く息を吸った。
ここまできて何も無かったという報告をエリーにしてしまったら雷どころではないと、そう確信していたのだ。
ーー下手したら、別荘の鍵を没収されるかも……。
あの気合いの入りようからして、失敗した時のイリアに向けられる威圧感は今までに感じたことのない程になると、頭の中で計算する。
まずはとにかく動かねばと、勇気を振り絞って同じように壁際で固まって話す令嬢達に声を掛けた。
「初めまして」
基本の挨拶をして笑顔を向けるが、彼女達は見ず知らずの相手に興味はないとでも言うようにきっぱりと背を向けた。
諦めるのはまだ早いとその場は会釈をして、胸を張って立ち去る。