研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
動揺する素振りを見せないイリアの立ち振る舞いは完璧だった。
そんな彼女を好印象に受け止めたのか、男性は胸に手を当てしなやかな動きを見せる。
「初めまして、僕はアルロス・マックバーン。君の名前を聞いても?」
「初めましてアルロス様。私はイリア・バーリアスと申します」
「イリア……」
名前を復唱する彼に首を傾げると、何もなかったように口角が上がった。
「実はこの舞踏会に参加する者達の輪に入れなくてね。恥ずかしいことに逃げて来たら、先客が居たんだ」
「そうだったのですか。実は私もです」
素直に打ち明けるとアルロスは少し驚いた素振りを見せると、バルコニーの柵へと近づき夜空を見上げた。
「では、似た者同士少しご一緒しても?」
「ええ。もちろんです」
同じようにこの場に馴染めない人が隣にいるだけでも、こうも安心感が違うものかと内心ほっとしていたのだ。
一人でいるより少しは浮かないだろうと胸を撫で下ろしていると、アルロスがお近づきの印にと胸元から何かを取り出した。