研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
取り出されたのは綺麗な一輪の花……ではなく、野草の類の野花だった。
その野花に見覚えがあったイリアは、瞳を輝かせた。
「タトイジールですね」
「おや、ご存知で?」
「す、少しだけ薬草の勉強をしていたもので」
オタクスイッチが入るのを阻止するように、嘘の言葉を吐き出すと目線をアルロスへと移す。
「どうして持っているのですか?」
「この花には精神を安定させる成分が含まれていて、お守り代わりに持ってきたものなんです。綺麗な花だったので女性にも喜んで貰えるかなと思って」
その言葉に成程と頷いて見せ、訂正したい気持ちをぐっと堪えた。
ーーこの野草って確か中毒性の強い作用があったはず……今は人が持ち歩いていると麻薬危険物保持者として逮捕されるんじゃなかったかしら?
危ないものを持っていることに気づいていないのか、アルロスは手に持った野花をイリアに突き付けてくる。
ここは受け取らねばならないものかもしれないが、少々渋る。
自分が持ち歩いていたと知れたら家族も巻き添いを食らう可能性だってある。
致し方ないとイリアはアルロスから向けられた野花を受け取らずに、閉ざしていた口を開く。