研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。
見知らぬ人が自分をどう映すのか、それはその人でない限り分からない話だ。
見えない恐怖を抱えながらここに訪れたアルロスは自分をどうにか変えようと言う気持ちが、勇気へと変わったに違いないとイリアは静かに目を伏せた。
イリア自身も似たような状況で舞踏会に参加し、結果逃げ腰になりつつあった。
彼を見て負けてられないと開いた目の奥底に光を宿しながら、アルロスを見つめた。
「しっかりと私には貴方が映っていますよ」
「ありがとう、イリア」
「こちらこそ声を掛けてくださって、ありがとうございます」
「それにしても少しの勉強だけで、そんなに知識があるなんてイリアはすごいよ」
突然の褒め言葉にここは素直に喜ぶべきか、それまたオタクを隠しきれなかったことを悔やむべきか悩んでいると、吹き抜ける風に流すようにアルロスが胸元に入っていた野花を手放した。
「様々な知識を持っていることを恥じる事なんかないと僕は思うけど」
「そう言って頂けると助かります。ただ世の中にはそう思わない人も少なからずいるので」
「そう?好きな物に一直線でいる、そんなの素晴らしいに決まっているじゃないか!」
興奮した口調で言われたその言葉が心臓を抉るような感覚にアルロスを見つめた。