研究オタクな令嬢は、ドラゴン【研究対象】に夢中。


その視線に気づいてもアルロスはイリアに視線を向けることはなかった。ただ真っ直ぐとバルコニーのから見える景色を眺めている。

仮面の下の瞳が微かに揺れたかと思えば、低く唸るような声で言葉を続けた。

「誰に何を言われようが好きな物を貫く。僕はそうして生きてきた。例えどんな目を向けられ罵られようが、蔑まれようがが全て最後には僕が貫き通すのだから」

イリアと同じように心を縛り付けるような好きな物がこの人にもあるのだと思う反面、好きな物という割に怒りに満ち溢れた声に背筋が凍る。

好きな物を誰かに分かってもらいたいが、それを理解されるのが難しいのは分かる。

だがそんなにも人に拒まれるということをされた事はなかった上に、お茶会に参加して少なからずの人が自分を分かってくれるのだと安心した。

まだ誰かに分かってもらうことは不可能であると思い込んでいるアルロスに、そんな事はないと否定しようとしたその時だった。

バルコニーの柵に置いていた手を取られ、その手にしっとりとした唇の感覚が触れた。

「君には知識がある。それは何れ武器となるのを忘れずに。いい手駒になるからね」

手の甲にキスをされたと認識するのに時間が掛かりすぎて、アルロスの言葉の意味など考える余裕はなかった。

このような流れになったらどう反応するべきなのか、エルメナは何も教えてはくれなかった。



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